いじめの逆転

 いじめっ子がいじめられっ子に、いじめられっ子がいじめっ子に、なることがあります。

 こんなことがありました。


  中学一年生の時いじめの中心になっていた子がいました。担任の先生が何度もいじめをしていることを保護者にも話しました。その生徒ともなんども面談をしました。学年でも学校事実は把握して、対策を色々とりました。

 でも保護者は一向に取り合わず「先生がうちの子に偏見を持っている」と逆切れし、有効な指導ができぬまま一年半ほど過ぎてしまいました。

 いじめをしている子にとってはこれは大きな支えになってしまいます。保護者という大きな後ろ盾がいるからです。

 中学一年生のころはまだまだ体の発達に差があります。乱暴な言葉づかいをする者や、体力の強いものがいじめの中心になりがちです。

 でも中学生の成長は早く3年生になると力関係が逆転してしまうことが多いのです。それまでいじめられていた子供たちの方が部活の練習でもコツコツと練習に励んでいることもあります。それ故体力や学力でも勝るようになります。

 そうすると今までいじめられていた恨みもあるので今度は集団でいじめていた子をシカトするようになります。というよりは相手にしなくなったのです。

 その結果今までいじめをしてきた生徒は学校を休んでしましました。

 この事態が起きた時、それまで学校の話を一切聞かなかったいじめていた側の生徒の保護者は怒り声をあげ学校に抗議に来ました。

 そして担任と話した後、体育館に行き腕を組み10分ほど怖い顔をして練習をしている生徒たちをにらみつけました。

 その結果どうなったかというと、翌日部活の生徒10人は一斉に休んでしまいました。理由は次のようなものでした。

「自分たちは今までいじめられてきた、でも心配してもらえなかった。いじめてきた生徒は休んだから心配されたのだ。だから自分たちも休んだら心配してくれるだろう」

 この後いろいろあるのですが、なんとか一応解決した形をとりました。

 このケースに関しては色々な意見があると思います。解決方法など簡単に出せるものではありません。


・いじめられていたとはいえ集団シカトをしてしまったのは不幸なことです。

・それまでいじめられた側の生徒に同情も湧くでしょう。

・中一の時、もっと有効な手段でいじめをやめさせることができなかったのかと思

 われるでしょう。

・いじめていた生徒の保護者のエゴだと怒りを感じる人もいるでしょう。

・モンスターペアレントを出さないように意志疎通を図るにはどうしたらよかった

 のだろう。

   etc

 答えは一つではないはずです。

 もしも一年生の時、担任が厳しくいじめている側を指導して保護者が「学校が偏見を持っている」と教育委員会に抗議をし、それを受け校長を通じ担任に適切な指導をするようにと話が言っていたらどうなるでしょうか。その結果もっといじめが加速していたかもしれません。…実はこうしたケースもあります。


 学校側がアンケートをとったとします。生徒はいじめている生徒が怖くて本当のことを書けません、そこまで追い詰められていることもあります。

 何人かの教師をスケープゴートにすることもあるでしょう。


 匿名アンケートの内容がすべて本当のこととは言えません。報道されるほど大きな事件になった後は本当のことを書く生徒もでてきます。

 それはこの時期しか助けを求められないと思うからです。


 いじめをしている側の生徒の家庭環境や生育環境はどうだったでしょうか?

家庭内の問題、経済的な問題にどこまで教師は入ることが許されるでしょうか?

それを可能にする先生もいます。それは深い信頼関係を作ることができた先生です。

でも今の時代、それも本当に難しくなってきています。昔は先生も保護者お同じ地域の人だのです。ですから、ある程度家庭環境にも入り込んだ話もできました。また地域の目も行き届いていたのです。


 いじめは、周囲の大人皆が責任を持つことだと認識することでしょう。行政や学校がすればいいとか、誰かに責任を負わせようとか、単純な答えを見つけようとするのはふさわしい方法ではないように思います。

 いじめをした生徒の家族の名をさらしたり、「死ねばいい」とかそういう言葉を見たり聞いたりするたびに、悲しくなってしまいます。怒りすら感じてしまいます。それは何ら解決になりません。

 以前も書きました、誰も不幸になるために生まれたのではありません。子供を悪い子にしようと生んだ親はいません。


 みんなで良い方法を考えていきましょう。


いわゆる不良グループなどの集団で起きやすいようです。