子供の貧困

2014年12月23日

 昨日22日NHKで子供の虐待について特集番組が放送されていました。それを見て私が体験したことをFacebookに書いたところ反響があり中にはシエアしてくださる方もおられました。いろいろ迷ったのですが、同じ記事をここに書かせていただきます。

 いじめや、差別に経済格差が大きく原因してること、それを痛感しています。特にこのごろの風潮、誰が勝ち組だとか、負け組だとか、底辺だとか、平気でその言葉を使い、嫌な思いをする人がいるという現実。

そのような言葉を聞きたくないと日頃から思っているからです。

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 NHKで子供のホームレスの話をしていた。車上生活、一人で暮らす子供、、、、これは今に始まったことではない、いつどの学校であったかは書けない、例え早期退職した後も秘守義務はあるから。

 入学式の朝、新入生が皆式場に入った。他学年の先生はそれぞれ持ち場についた。

 校門のところに私服の女性が立っていました、最初は皆も気に留めていませんでした。でも次第にみんなの目がその女性の方に向いていったのです。

 最初保護者かと思ったのですが、どうやら少女なのです。しかも手には紺色の服を抱えていました。

「もしかして家族の子で制服を忘れた子に持ってきたのだろうか?」

「いやそんなことはないだろうし。。」

「聞いてみようか?」

 その少女は我々の方を見ていました。そして私たちがそちらを見て話していることを確認したらしく、こちらの方に歩いてきました、意を決したように。

 そこで少女が話したことは

「私は新入生です。○○の車で寝泊まりしています。入学の通知のハガキが来ました。制服の下だけは買ったのですが、上着が買えませんでした、式場の端っこでしいですから、式に出させてくれませんか?」

 手には確かに通知のハガキがありました、あて先は○○路上の車、、。

話し終えると少女は泣き出しました。

 その場所にいた先生たちは私と同じ三年生の先生方でしたが、あまりにも受けた衝撃が大きかった。

「いいよいいよ、ちゃんと式に出られるよ。」

「ほら、校長室の前に中学の制服の見本があるじゃん、あれを着せてあげようよ。」

 普段、すごく怖い先生で通っていた先生が機転を利かしたその言葉、すぐに私ともう一人の先生とで校長室の前の展示スペースを開け、女生徒の制服の見本を取り出しました。

 当然管理職もその他の先生もいません、でも誰も迷うこともなく行動しました。

 保健室の女性の先生にも話し、すぐに保健室で着替えさせ式場に連れていきました。

 入学式では受付で当日来てもちゃんと学級に入れる体制はいつでもどの学校でもとっています。

 すぐにその場でクラスを決め、名簿に加えました。

式後、制服に着替えた女の子は担任の先生の引率で他の生徒と一緒にクラスへと進んでいきました。

 後で職員室へ来たとき、すっかり普通の中学生の雰囲気でした。

 一年生の最初の校外学習にも参加しました。担任の先生の話では、畳の部屋で寝られると大はしゃぎだったとか。

 学校では市に連絡し、福祉事務所から生活保護者の住宅を探してもらいました。

 でもそれは学区外の住宅なので転校をしなくてはいけませんでした。

一学期までは学校に通わせ二学期からは居住区の学校に行くことになりました。

 一学期の終業式その子が職員室へきて、担任の先生と泣きながら話していたのを今でも覚えています。

「転校したくない!」

 今だったらもう少し通わせたかもしれませんが、その子は転校していきました。新しい学校でまた楽しく過ごせたようです。

 

こういうケースは実は学校では数えきれないくらいありました。時はバブルです、そのころからあったことです。

 平成不況になって、学校にすら情報が届かない現実があります。経済的に苦しい家庭が増えたということです。いつの間にかいなくなるのです。警察や児童相談所、教育委員会にもちろん報告します。それで行方が分かるものではありません。

 職域を越えた専門の調査員を置くか興信所と連携でもしない限り分からないと思います。

 学校の先生が探し回ることは不可能です。できる限りの情報は集め、教育委員会に報告はします。仲良しだった子にもしも連絡が来たら知らせてくれるよう話すとか、あまりにもできることが限られているのです。

 最近の子供の貧困、20代の女性の10人に一人が貧困だとか、そういう話を聞くたびに、この少女のことを思い出します。


 たった一人でスカートを手に持ち、校門にたたずんでいた子を。

 私は勝ち組とか負け組とか言う人が本当に嫌いです。金のあることを誇らしげに話す人も好きではありません。

 好きで不幸になる人はいませんから。

文責 天野